クリストファー・ギブソン
チェロリサイタル
雨が上がり、さわやかな秋晴れとなった土曜の昼下がり、銀座18(でちょっと)クラシック第51章、クリストファー聡ギブソンさんのチェロリサイタルです。
アメリカ・ミシガン州生まれ。4才よりチェロを始め、高校在学中に Tanglewood, Indiana University, Interlochen の夏期プログラムに参加。横浜インターナショナルスクール卒業後、米イェール大学に進学、なんと哲学・政治学を二重専攻という秀才。在学中、チェリストAldo Parisot氏のオーディションに合格し、イェール音楽院のOle Akahoshi氏にチェロを、Wendy Sharp氏に室内楽を師事し、現在はチェリストとして東京、鎌倉、長野などを中心に活躍中で、昨年サントリーホール等で無伴奏バッハチェロリサイタルを開催するなど、バッハの演奏と解釈には定評があります。
今回のリサイタルにあたり、ギブソン氏‥弓が弦にあたり、振動が起き、楽器が鳴り、空間に広がって共鳴する。時間が流れ、その中で音が連なり、音楽となる。単純でもあり予測不可能でもあるこの時間芸術を通して、チェロの弦と弓の摩擦から、今日の演奏で何かを皆様に伝えることができれば‥とのお言葉をいただきました。
まず挨拶代りに有名な「白鳥」この曲は1886年にプライベートのコンサートのためにサン=サーンスによって作曲されたチェロの代表的な曲ですが、今日はピアノ伴奏なしのメロディーだけで演奏。人間の声の豊かさを感じる演奏でした。
バッハの「無伴奏組曲第一番」はバッハ本人の書いた原譜は消失しており、数ある譜の中からバッハの妻アンナ・マグダレーナの写譜にヒントを得た多声要素を意識した演奏との事。同じくバッハ作曲の「G線上のアリア」、言わずと知れた名曲ですが、主旋律と伴奏を部分的に含めたギブソンさん自身による、素晴らしい編曲でした。
無伴奏チェロ組曲の三番はハ長調で書かれてあり、楽器が響きます。オルガン曲を意識したような重低音が鳴り響いたかと思うと、チェロの異なる音域同士の対話が楽しめる曲でした。
リベルタンゴは1974年にイタリアで作曲された曲で、ピアソラがかなり苦しんでいた時のヒット曲です。自由なタンゴで、複数の楽器で弾く場合はそれぞれがソロを演奏したりと、ジャズの形式にも似ている部分があります。
モンティ作曲チャルダッシュは特にバイオリンで演奏されることが多い、緩急を駆使した曲ですが、今回はチェロの特性を生かしながら無伴奏の編曲で演奏してくださいました。チェロ1本でここまでリズム感とメロディーを出せるとは!驚愕の演奏に圧倒されました。
アンコールにはバッハの組曲4番から。
濃密なチェロの魅力を満喫した1時間でした。
11月4日17時開演
ならの木 サロンコンサート-弦楽器とピアノによるアンサンブル- トリオソナタで出演。
Tel 0267-41-0323
Program
カミーユ・サン=サーンス:白鳥
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007
J.S. バッハ:G線上のアリア
無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV1009
ピアソラ: リベルタンゴ
モンティ:チャルダッシュ
他
プロフィール
クリストファー・S・ギブソン(チェロ)
Christopher S. Gibson, cello
アメリカ・ミシガン州生まれ。4才よりチェロを始める。高校在学中に Tanglewood, Indiana University, Interlochen の夏期プログラムに参加。横浜インターナショナルスクール卒業後、2005年に米イェール大学に進学、哲学・政治学を二重専攻。在学中、チェリストAldo Parisot氏とのオーディションに合格し、イェール音楽院のOle Akahoshi氏にチェロを、Wendy Sharp氏に室内楽を師事する。2009年、同大学FOMコンクールにて入賞。2012年冬、国際演奏家協会新人オーディションにてバッハ無伴奏バイオリンパルティータ第2番の演奏で入賞した際、審査員の一人であるバイオリニスト川畠成道氏から「曲の世界に入り込むことの出来る演奏」という賛辞を受ける。NPO法人Emotion in Motion主催のもと、2017年”Bach SOLO”無伴奏チェロリサイタルシリーズをみなとみらい小ホール(5月)、ティアラ江東(8月)、所沢ミューズ(10月)、サントリーホール「ブルーローズ」(12月)にて開催。チェリストとして東京、鎌倉、長野などを中心に活躍中。鎌倉音楽クラブメンバー(同クラブ主催学生コンクール審査員)。