第53章
田原綾子ヴィオラリサイタル

2018.12.22(土)
14:30 SOLD OUT
17:00 SOLD OUT
 
クリスマスに華やぐ銀座の一角で、田原綾子さんのクリスマスヴィオラソロリサイタルが行われました。
田原さんはルーマニア国際音楽コンクール全部門グランプリを受賞。読売日響、東京交響楽団、東京フィル等と共演。室内楽奏者として著名なアーティストと多数共演し、現在はパリ・エコールノルマル音楽院にて、研鑽を積んでおられます。つい1週間前には紀尾井ホールでブラームスのヴィオラソナタを弾かれ、大舞台で活躍されていますが、その田原さんにとっても、初めての無伴奏リサイタルとのことで、バロックからロマン派、現代までの作品を幅広く集めた意欲的なプログラムを組んでいただきました。
ヴィオラ一本でどこまで表現を突き詰められるのか、大きな挑戦となりそう、豊富を語っておられました。
まず一曲目。ビーバーのパッサカリア。
ザルツブルク生まれのビーバーのパッサカリアは聖母マリアとイエス・キリストの生涯を綴った「ロザリオのソナタ」の最終楽章で、始めのド-シ-ラ-ソの4つの音がモチーフとなり、その表情を少しずつ変化させながら曲が進んでいき、荘厳でありながらも美しい作品です。
ヴュータン : 無伴奏ヴィオラのための奇想曲 「パガニーニへのオマージュ」op. 55 (遺作Op. 9) ヴュータンはベルギーで生まれ、ヴァイオリン協奏曲やヴィオラの作品も数多く残しました。このカプリッチョは情熱的で短いながらも聴かせどころ満載の一曲。
ヒンデミット:無伴奏ヴィオラソナタ 作品25-1
自身が素晴らしいヴィオラ奏者でもあったヒンデミットは、この楽器の持つ能力を最大限に発揮する作品を数多く生み出しました。無伴奏ヴィオラソナタは全5楽章から成っており、劇的に始まる第1楽章から流れるような第2楽章、静かな歌で語られる第3楽章、そして嵐のような荒々しく激しい第4楽章を経て、憂いを感じさせる5楽章。
ストラヴィンスキー:エレジーは追悼のために書かれた作品。田原さんのパリで師事するパスキエ先生が、ストラヴィンスキー本人の前で演奏した、というエピソードを語ってくれました。人生を振り返っている情景が浮かび上がるかのような味わい深い曲。
最後はクルシェネク:無伴奏ヴィオラソナタ 作品92-3
ウィーン出身のクルシェネクが、バッハの無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番のオマージュとして作曲。激しいリズムと音型が特徴的なソナタ形式の第1楽章、静かな緊張感が張り詰める第2楽章、弱音器によって不思議な世界観が生み出される第3楽章に、多種多様な演奏技法を駆使した第4楽章は圧巻。
クリスマスらしからぬ、緊張感いっぱいのソロリサイタルでしたが、アンコールにクリスマスメドレーを弾いていただき、ほっこりと終了。演奏後の茶話会も和やかに、クリスマスリサイタルは幕を閉じました。
1月4日には5年も続けているラルーチェハ重奏団の演奏会(東京文化会館)を控え、早速明日から練習に入るという田原さん。今後の活躍に益々目が離せません。
 
Program
ビーバー:パッサカリア
ヒンデミット:無伴奏ヴィオラソナタ 作品25-1
ヴュータン:カプリッチョ
ストラヴィンスキー:エレジー
クルシェネク:無伴奏ヴィオラソナタ 作品92-3
 
田原綾子(たはらあやこ)viola
第11回東京音楽コンクール弦楽部門第1位及び聴衆賞、第9回ルーマニア国際音楽コンクール全部門グランプリを受賞。読売日響、東京交響楽団、東京フィル等と共演。JTが育てるアンサンブルシリーズ、宮崎国際音楽祭、武生国際音楽祭、題名のない音楽会、クラシック倶楽部、リサイタル・ノヴァ等に出演、室内楽奏者としても著名なアーティストと多数共演している。これまでに藤原浜雄、鈴木康浩、岡田伸夫の各氏に師事。桐朋学園大学音楽学部を卒業後、現在はパリ・エコールノルマル音楽院にてブルーノ・パスキエ氏の下、研鑽を積んでいる。2015年度宗次エンジェル基金奨学生、2015、2016年度ローム音楽財団奨学生、第47回江副記念財団奨学生。使用楽器は、サントリー芸術財団より貸与されたPAOLO ANTONIO TESTORE。