第62章
齊藤 一也ピアノリサイタル

 
コンチェルティーナGINZA五周年記念、フランス室内楽の夕べ、おかげさまで大盛況で先週木曜に終わり、記念公演後初の銀座でちょっとクラシック、第62章 齊藤一也さんピアノリサイタルです。
齊藤一也さんは、王子ホールで共演の長尾春花さん、鈴木舞さん、實川風さんの3人と東京藝術大学付属高校からの同級です。
今回室内楽のためにベルリンから帰国していただきました。そして出身地山梨でのリサイタル、今回銀座と休む間もないハードなスケジュール。
これまで国内外で数えきれないほどのコンクールで入賞・優勝を果たし、世界中の音楽祭で招聘されて演奏活動をされている齊藤さん。
今日のプログラムも、とても気合いの入った、1部2部ともずっしりとしたプログラムです。齊藤さん自ら、プログラムノートを作成していただきました。
まず1部
L.v.ベートーヴェン(1770-1827):ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110は、ベートーベン晩年の傑作として名高いものです。人生とは何か、全世界に語りかけるような深淵なる第1楽章、不気味な旋律と激動の和音連打が交差する第2楽章、第三楽章は「嘆きの歌」に始まり、その後雄大なフーガでクライ マックスを迎えると思いきや、突如再び、心底希望を失った「嘆きの歌」が聞こえてきます。絶望の淵に差し込む希望 の鐘の和音が鳴ると、昇天していくようなアルペジオの上昇と共に、逆音型のフーガが始まり、人生の喜びを全人類みなで分かち合おうという、ベートーヴェンの魂歌が朗々と歌われます。晩年は難聴に苦しみながらも、己に打ち勝ったベートーヴェンが、人類の尊厳や全能の神への感謝を存分に表した作品です。
Z.コダーイ(1882-1967):9つのピアノ小品 op.3より 第2番ハンガリー生まれの作曲家コダーイは、バルトークとともに自国の伝統的な民謡の研究に生涯 を費やしました。ペンタトニック(五音音階)を多用した新しい和声に則ったハンガリー民謡由来のリリカルな旋律は、コダーイならではの哀愁が漂います。この第2番は、深い悲しみと慟哭の想いが詰まった作品です。
B.バルトーク(1881-1945): 3つのエチュード op.18より 第3番
ベラ・バルトークもコダーイとともにハンガリー民謡の研究に成果を上げ、また現代音楽における概念をより革新的な ものへと導きました。この 「3つのエチュード」は1918年に書かれ、第3番は、激しく動き回る16分音譜と和声が複雑に絡み合い、絶妙な緊張感を生 み出しています。中間部は、2拍子からなる土着的な舞曲の要素が取り入れられています。
一部の最後は、S.ラフマニノフ(1873-1943):コレルリの主題による変奏曲 op.42 ロシアを代表する作曲家・ピアニストの一人です。晩年本拠地をパリに移し、新天地で作曲活動を再開させた頃に書かれた作品が、この「コレルリの主題によ る変奏曲」です。ラフマニノフならではのピアニスティックさが強調されていますが、間奏曲のコラールなどの叙情も聴き逃せません。最終の17~20変奏で急激な盛り上がりと共に頂点を迎え、コーダで は、再びアンダンテで主題を回想するように、曲は静かに閉じられます。(曲目解説 : 齊藤一也一部抜粋)
一部アンコールはラヴェル「水の戯れ」ラフマニノフ「前奏曲」超難度の高い曲ばかり。
~プログラムノート (16:00- 第2部)
F.リスト (1811-1886):巡礼の年 第2年 「イタリア」 S.161
ピアノの名手としても名高く、ヨーロッパ中で人気の絶えなかったリストですがイタリアを旅行し、初めて触れたイタリア絵画や彫刻などの芸術作品、文学に触れた時の感動と印象を曲にしたものが、全7曲から成る「巡 礼の年第2年イタリア」です。曲中には、リストが特に感銘を受けたラファエロやミケランジェロ、詩人のフランチェ スコ・ペトラルカ、サルヴァトール・ローザ、そしてダンテなどの実際の作品が登場します。齊藤さん自ら参考資料を用意していただき、より理解を深める事ができました。
第1番「婚礼」第2番「物思いに沈む人」第3番「サルヴァトール・ローザのカンツォネッタ」第4番「ペトラルカのソネット第47番」第5番「ペトラルカのソネット第104番」第6番「ペトラルカのソネット第123番」第7番 「ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲」
アンコールは巡礼の年第1年、スイスよりジュネーブの鐘、ラストにリスト、ラカンパネラで燃焼し切った1時間。
素晴らしい集中力と表現力。ベルリンでまた日本で、今後の齊藤一也さんのご活躍をお祈りします。


Program
13:30
L.v.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 op.110
L.v.Beethoven : Piano Sonata No.31 in A flat Major op.110
Z.コダーイ:9つのピアノ曲より op. 3より 第2曲
Z.Kodály : Nine Piano pieces op.3 Nr.2
B.バルトーク:3つの練習曲 op.18
B.Bartók:Three Etudes op.18
ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲 op.42
S.Rachmaninov : Variation on a theme of Corelli op.42

16:00
リスト:巡礼の年 第2年 「イタリア」 S.161 全曲
F.Liszt : Années de pèlerinage deuxieme année "Italie" S.161


齊藤 一也 (さいとうかずや) piano
1990年山梨県生まれ。4歳からヤマハ音楽教室にて、ピアノ・作曲を石丸八重子,青木進,山下葉子の各氏に師事。
2002年よりヤマハピアノ演奏研究コース,東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、同大学音楽学部ピアノ科にてピアノを秦はるひ氏に師事。大学卒業と同時に2011年より渡仏し、パリ国立高等音楽院ピアノ科に審査員満場一致の最高
成績で入学、ピアノをMichel Dalberto,Claire-Marie Le Guayの各氏に師事。2014年に第一課程、2016年に第二修士過程を最高成績で卒業。2017年4月より、ベルリン芸術大学修士課程ピアノソリスト科にて、Björn Lehmann氏の下で研鑽を積む。これまでに国内外数々のコンクールにて優勝入賞。2006年8月,「第4回東京音楽コンクール」ピアノ部門,最高位(第2位)。2008年11月,「第9回スペイン人作曲家ピアノ国際コンクール」(スペイン・マドリッド)第3位,及びG.B.BRAVO賞。
2009年10月,「第66回ロン・ティボー国際コンクール」ピアノ部門(仏・パリ)ファイナリスト,フォーレの演奏における最優秀賞Madame Gaby Pasquier賞。2010年8月,「第5回ヴィルトォーゾ・ド・フトゥール国際コンクール」(スイスCrans‒Montana)最高位( 第2位)。2010年10月,「第79回日本音楽コンクール」ピアノ部門第3位。2013年10月,「第82回日本音楽コンクール」ピアノ部門第2位、及び三宅賞,岩谷賞(聴衆賞)。2014年12月、「第8回カンピージョス国際ピアノコンクール」(スペイン・マラガ)にて第1位。2015年3月,「第61回マリア・カナルス国際音楽コンクール」(バルセロナ)第4位。また、2015年8月にはヨーロッパ屈指の難関コンクール「第18回パロマ・オシェア・サンタンデール国際ピアノコンクール」にてファイナリスト賞。2016年6月,
「第7回マッサローザ国際ピアノコンクール」(伊・ルッカ)にて第1位。2017年9月、「第66回ARDミュンヘン国際音楽コンクール」(独・ミュンヘン)ピアノ部門にて、セミファイナリスト。2017年12月、「第22回アルトゥール・シュナーベルコンクール」にて
最高位(第2位)。2018年4月にベルリン・スタインウェイハウスで行ったリサイタルが評価され、スタインウェイ賞を受賞。