第68章
毛利文香•田原綾子DUOリサイタル Sold Out

急に秋が深まって、街に人通りも戻ってきました。各種イベントも少しずつ再開され、これまでクラシック音楽のコンサートに行きたくてもいけなかった方々が生の演奏を楽しめる機会が増えてきました。
銀座18(でちょっと)クラシック、 昨日の王子ホールに続いて、汐留ホールをお借りして毛利文香さんと田原綾子さんのDUO リサイタルを開催しました。
もともと毛利さんのソロコンサートを5月に銀座で予定していましたが、コロナの影響で延期になり、
コンチェルティーナの空間では3蜜が避けられないため、場所を変えての開催となりました。
お二人は15年来の友人で、DUOや室内楽でも数々の共演を重ねています。
前半はソロで。まず田原綾子さん
ヒンデミット:無伴奏ヴィオラソナタ 作品31-4
自身が素晴らしいヴィオラ奏者だったヒンデミットの曲は技術的にも難度が高く、第1楽章の第1音から低弦の激しい音色に圧倒されました。
続いて第2楽章はまるで静かな詩を紡ぐかのように、最終楽章では冒頭のテーマが少しずつ変奏されていき、ゆったりとした中間部を挟んだ後、幅広い響きをたたえたフィナーレへと盛り上がっていきます。
この曲に挑戦した田原さんの意気込みが伝わってくる演奏でした。
2曲めは毛利文香さんのソロで、バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番 ハ長調 BWV1005アダージオ、フーガ、ラルゴ、アレグロ・アッサイの4つの楽章で構成されています。
聖霊降臨祭の伝統的コラール《来たれ聖霊、主なる神よ》が基になっているフーガは、3曲のソナタの中でも最も長大で、重音が多用されており、非常に精度の高い技術が要求される難曲。丁寧かつ情熱的な演奏は圧巻でした。
休憩を挟んで、後半はヴァイオリンとヴィオラのDUOです。
イタリアの作曲家、ロッラのデュオ・コンチェルタンテ ハ長調は、一転して明るく楽しい曲で、15年来の親友同士、息のあった演奏でした。
ロッラは、ミラノ・スカラ座のディレクターを務め、ロッシーニやドニゼッティのオペラの初演の多くを指揮し、管弦楽の作曲も数多く残したそうです。
続いてアメリカの作曲家、ジョン・ウィリアムズのデュオ・コンチェルタンテ のっけから、不協和音の連続で、思わず会場でプログラムを見直した方も多かったです(汗)
すごい現代音楽で、これがあの「スターウォーズ」や「シンドラーのリスト」、「E.T.」など数々の映画音楽で知られたジョン・ウイリアムズ?と思ってしまう曲でした。
2台とは思えない多彩な響きや切迫感が魅力的な作品。なかなか聴くことができない曲、もちろんお二人も今回が初めての挑戦とのことでした。
アンコールには モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲1番から第2楽章。やっとホッと癒される音に戻ってきました。
お二人のファンが多数訪れ、蜜を避けながらも是非お話したい、というお客さまが集い、この貴重な再会を喜んでいました。
やはり私たちクラシックファンにとっても、演奏家にとっても、生の演奏会は必要ですね。


第1部 SOLO
ヒンデミット:無伴奏ヴィオラソナタ Op.31, No.4
バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番 ハ長調 BWV1005
第2部 DUO
ロッラ:デュオ・コンチェルタンテ ハ長調
ジョン・ウィリアムズ: デュオ・コンチェルタンテ
 
 


毛利文香 プロフィール
2012年、第8回ソウル国際音楽コンクールにて、日本人として初めて、最年少で優勝。
2015年、第54回パガニーニ国際ヴァイオリンコンクールにて第2位、エリザベート王妃国際音楽コンクール2015にて第6位入賞。
これまでに、川崎市アゼリア輝賞、横浜文化賞文化・芸術奨励賞、京都・青山音楽賞新人賞、ホテルオークラ音楽賞を受賞。
ソリストとして、神奈川フィル、東京フィル、東京シティフィル、東京響、群馬響、大阪響、韓国響、ベルギー国立管、ブリュッセルフィル、クレメラータ・バルティカなど、国内外のオーケストラと共演を重ねるほか、サー・アンドラーシュ・シフ、アブデル・ラーマン・エル=バシャ、タベア・ツィンマーマン、堤剛、今井信子、伊藤恵などの著名なアーティストとの共演も数多い。
2016年3月には、紀尾井ホールにてデビュー・リサイタルを行った。
ヴァイオリンを田尻かをり、水野佐知香、原田幸一郎の各氏に師事。
桐朋学園大学音楽学部ソリストディプロマコース、及び洗足学園音楽大学アンサンブルアカデミー修了。
慶應義塾大学文学部卒業。現在、ドイツ・クロンベルクアカデミーに留学し、ミハエラ・マーティン氏に師事している。
 

  田原綾子 プロフィール
神奈川県出身。第11回東京音楽コンクール弦楽部門第1位及び聴衆賞、第9回ルーマニア国際音楽コンクール全部門グランプリを受賞。読売日本交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー管弦楽団等と共演の他、室内楽奏者としても幅広く活動中。これまでに藤原浜雄、岡田伸夫の各氏に師事。現在はパリ・エコールノルマル音楽院にて、ブルーノ・パスキエ氏から指導を受けている。桐朋学園大学院大学特待生。2015年度宗次エンジェル基金奨学生、第47回江副記念財団奨学生。サントリー芸術財団よりPaolo Antonio Testoreを貸与されている。